屋久島はひと月に35日雨が降る~作家・林芙美子「浮雲」の世界~
【屋久島が「月のうち、三十五日は雨」と知られるきっかけは、戦後の一編の小説から】
【放浪の作家・林芙美子の世界観を通して、時間を超えて屋久島が喚起する観念に光を当てます】
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今回はこれまでと一味違って、文学の話題です。
戦後の日本を背景に、「月のうち、三十五日は雨」が降る屋久島で、
印象的なクライマックスを迎える長編小説「浮雲」。
戦時中に仏領インドシナの地方山林事務所で出会った男女が、
引き揚げた日本で腐れ縁を引きずりながら転落していく物語で、
終盤に主人公が再起を願ってたどりつく場所が屋久島です。
ニヒルだけどモテるダメ男と別れられない女の悲恋の物語として読まれる「浮雲」ですが、
時代背景に思いをはせ、注意深く言葉を拾っていくと、
もつれあう男女のずれから〈自然と人間のたわむれ〉と〈自由〉を希求する、
林芙美子の精神が浮かび上がってきます。
林芙美子の渾身の大作『浮雲』をひもとき、
時代の潮流のなかでもうつろわない、屋久島の引力について考えてみましょう。
今回は、京都精華大学特別共同研究員の王智弘さんに、
文学から読み解く屋久島の魅力について、お話していただきます。
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【講師のプロフィール】
王 智弘(おう ともひろ)さん
(京都精華大学特別共同研究員)
「資源」や「風土」をキーワードに、屋久島の自然と人のかかわりを研究。
おもな著書に、
『臨床環境学』(共編著、名古屋大学出版会)
「資源の屋久島—「夢」をめぐる中心と周辺」
『日本ネシア論』(分担執筆、藤原書店)
「資源の分配と社会的分業の展開—近代屋久島の林業と漁業」
『資源と生業の地理学』(分担執筆、海青社)など。
NPO法人屋久島エコ・フェスタ理事、龍谷大学非常勤講師も務める。
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